税と向き合うということ
EPISODE
飛び込んできた依頼人
1本の電話がありました。「マルサに追われている、助けてほしい」——何ヶ所か税理士事務所に電話をしたそうですが、全部断られたようでした。
正直迷いましたが、職業人として引き受けました。受任後すぐ、事務所に5、6人ほどの国税局の職員が詰め掛けてきて、その場で契約を済ませて話を進めていきました。もし私が受任しなければ、逮捕も視野にあったようでした。
| 国税局とのやりとり 数ヶ月をかけて、事実を確認し、国税局とすり合わせをしていきます。先方は正論で、とても厳しい主張をします。当方は押される立場ではありましたが、その中で主張すべきことを主張します。 本件は、結果的に当初見込んでいた税額の半分ほどで決着した記憶があります。 |
ニュースになったら「調査を受け、追徴税を払うことになった」で終わります。しかし、本当に大変なのはここからです。
納税は過去数年分の税金を短期間で払うため、キャッシュフローがかなり圧迫されます。当然、今期の税金も払わなければなりません。銀行から借りることは難しい。
それは、お客様、従業員・家族、協力会社——周りにも波及し、仕事を失うことも考えられます。税金から逃げた結果、事業の根幹である社会的信用を失ってしまうのです。
TURNING POINT
税をポジティブに見る、という転換
この件をきっかけに、税理士の使命とは何か、経営者に最も近い存在として、どう立ち振る舞うべきなのかを考えるようになりました。
税を軽く考えた結果、大きなものを失う。「税から目を逸らすと、信用を失う」は当たり前すぎて答えにならない。そんな疑問を頭の片隅に常に持つようになりました。
そして、いつ頃からか自分の中で考えが変わりました。
から
「税と向き合い、信用を高める仕組み」へ。
税と真摯に向き合うために、毎月数字を見ることを習慣化していきます。毎月数字を見ることで、現場の課題にも早く気づくようになります。改善を積み重ねることで、数字も少しずつ良くなっていきます。
事前に利益が見えてくると、設備投資や採用も早めに判断できるようになります。結果として、会社の資産や資本が厚くなり、経営の安定につながります。その過程で、無理のない形で税負担を抑えられることもあります。
PHILOSOPHY
税という共通の基準で数字を見る
大切なことは、税を基準に、継続して経営を探ることができるかどうかです。
資金調達や節税対策、月次決算など——敷居の高さからなかなか取り組めない事業者もいます。税という共通の基準で数字を見ることで、実はそれぞれ別のものではなく、すべて経営に繋がっていることに気づきます。経営全体を整理しやすくなるのです。
特に税務会計の多い中小企業では、納税の仕組みを通じて経営の骨組みを診て整えるのが、最も効率的です。変化の速い現代、そこには一石二鳥以上の価値があります。
税理士にも、それぞれ違う経験があり、考えがあります。その中で、私はこうした経験を通じて、今の考えに至りました。
近道も裏技もありません。正しい方向に小さな努力を積み重ね、一段ずつ進むしかないと思っています。私は税と向き合うことは、会社の未来と向き合うことだと考えています。
税から目を逸らさず、数字と向き合い、経営と向き合う。
その積み重ねが、会社を長く続ける力になると信じています。
ゆう税理士事務所
代表税理士 小林 優子